BMW F31型 320d ツーリング レポート

 購入して早1ヶ月、走行距離は4,000kmに満たないが、これから購入を考えている方の参考になればと思いレポートする。
 BMWの3シリーズは、2019年4月に新型セダンが登場したが、クーペやツーリング(ワゴン)のモデルチェンジは秋以降予定されており、この記事を書いた2019年6月現在、このモデルはまだ現役である。現在、モデル末期ということもあり、バーゲンセール中で、かつ新型が大きく変わっていないため、大変お買い得な車である。

このモデルを選んだ理由

 東京に単身赴任中であり、東京と奈良の往復に使用できる車が第一条件である。また、東京23区では駐車場の確保、特に屋内駐車場の場合は立体駐車場が殆どで、安い駐車場を確保するには背の高いSUVでは難しい。また、奈良で庭仕事をするにはホームセンターで器材を購入し、車で持ち帰るため、荷室の長さ2m程度確保できることが条件となる。従い、ステーションワゴン車がベストである。
 高速航路での燃費を考えると、ディーゼルエンジンが圧勝だ。この車でも高速道路では19-20km/L走る。市街地はハイブリッド車並みとは行かないが、それでも14-15km/Lは確保できる。しかも軽油はガソリンより2割安い。これは軽油には揮発油税が掛からないためだ。
 欧州のディーゼル車は第4世代と言われる2Lで190ps/40Nmというスペックが一般的だ。日本のディーゼル車はマツダ以外は第2世代でかなり遅れている。例えば最新型のデリカD5では2.2Lで145ps/38Nmである。第4世代は振動や騒音もガソリン車並みだ。アイドリング時以外にディーゼルだと気づく人は少ないだろう。 買うなら欧州車になる。
 欧州車で2Lディーゼル車の選択肢は多いが、プレミアムカーになるとベンツとBMWになる。予算の都合でDセグメントになり、ベンツC220dも候補に上がった。エアサス仕様なら乗り心地がソフトでレーダーセフティーパッケージの内容はBMW以上である。ロードノイズも抑えられており快適性では文句がない。しかし、試乗してみて、BMWの方が圧倒的に楽しい。これが決め手でした。
 外車買うなら新古車と決めており、今回は6ヶ月落ちの新古車(走行距離38km)を購入、新車での車両本体価格633万円(税込)にオプションを装備して698万円(税込)の車を、諸費用込み+前後ドラレコ+ポリマーコーティング付きで500万円ジャストで購入しました。これはお買い得です!

すっきりとした外観

 長からず短かからず。4.7mの全長に上手く纏められたパッケージングとロングノーズが魅力です。Cセグメントと比較して長さ方向に余裕があり、見た目には随分と上級車のように見えます。特に気にっているのが、ボディーラインです。最近の車はラインが入らないのっぺりとしたデザインが多く、特に日本車はウインドウラインが水平ではなく後ろ上がりのデザインが多いのですが、私はこのような水平基調の車が好きです。
 ベンツのCシリーズステーションワゴンやアウディーA4アバントなども似たようなデザインとなっており好感が持てます。フロントグリルのデザインは各社個性的ですが、一目見ればメーカーが分かるくらいにアイデンティティーが統一されているのが欧州車の特徴です。
 最近の日本車はフロントマスクに奇をてらったデザインの車が多くなってきました。中国の自動車メーカーも似たような傾向ですが、若いガンダム世代には受けるのでしょうが、私たちの世代はちょっと恥ずかしくって乗れませんね。最近出たクラウンも、もはや「いつかはクラウン」では無くなっています。あのヘンテコなグリル、何とかしてくださいよ。
 

駆け抜ける歓び

 オプション(128千円)の21インチホイールに装着されるのは、ポテンザS001ランフラットだ。前が225/40R19、後が255/35R19の極太タイヤで、エンジンパワーにタイヤが負けることはない。段差を超える時、多少のゴツゴツ感はあるが、乗り心地は悪くない。サスペンションとのチューニングはベンツより上手い。ブレーキはしょぼく、前後共にフローティングタイプだ。ブレーキの効きも甘く日本車並み、その分ホイールは汚れないが、これは要改善だろう。
 エンジンは4気筒だがガサツさが全くなく良く回る。流石にエンジン屋を豪語するだけのことはある。ディーゼルエンジンなのに5500回転まで回るが、トルクが付いてくるのは4000回転当たりまでだろう。アクセルペタルが曲者で、2段階構成になっており、1段目はごく普通の走りで、もう一段踏み込むと俄然とダッシュを掛けてくる。これが結構速く、0-100km/h加速が7.4秒は納得だ。8速トルコンオートマとの相性も良く、タコメーターを見ない限り、シフトタイミングはわからない。ただ今時の車には珍しく、「ヒュンヒュン」と微かなタービン音が聞こえる。

 ハンドリングは超一級だ。前後の重量配分を50:50に拘り、後輪駆動である以外にも、車両の回転中央が運転席辺りにあるのだろうか、「人馬一体」という言葉のように、車体が曲がってゆく。FF車を長く乗っていたたせいもあるが、今まではリアがカーブの内側にあるイメージ(無理やりに曲がっているイメージ)だったのが、今回は外に膨らむかの印象(自然に曲がって行くイメージ)がある。最初に買ったブルバード910の運転感覚に近い。
 ベンツC220dを選ばなかった理由の一つに、シフトレバーがある。AMG以外のベンツはコラムシフトなのだ。慣れれば良いのだが、何度乗っても馴染めない。BMWはフロアシフトだが、AMGと同じように「前進と後退」「パーキング」がワンアクションだ。勿論、パドルシフトも付いている。(マニュアルからオートに戻すには+レバーを長く引くという独特の操作)ただし、パーキングブレーキがレバー式なのは頂けない。電気式にすべきだ。
 Mスポーツ仕様ではあるが、走り屋の仕様でないので、価格面もあり、ある程度の割り切りは仕方がない。しかし、ここまで太いトルクならもう少し回せないか?というのが正直な印象である。高速道路での瞬発力が今ひとつ足りない。正直、X3の40d仕様のような直6ディーゼルを搭載したスポーツバージョンがツーリングにも欲しい。
 また、今回は選択の余地は無かったが、ブレーキとサスペションの強化されたMスポーツブレーキ(対向ピストンキャリパー)とアダプティブMサスペンションはオプション(280千円)にあるので、一考の価値があるのではないかと思う。

ラグジュアリー

 Cセグメントに無いのはスバリこの部分です。Dセグメントになると各社インテリアにも力を入れるようになります。ドアトリムやダッシュボードのデザインに高級感が出てきます。ちょっとしたウッドのあしらいや皮シボ風のデザインにそれが現れます。
 BMWの場合、3,5,7シリーズではダッシュボード周りは共通のデザインになります。どれに乗っても、「あれっ?」と思う人は多いはずです。新しく出た3シリーズからデザインが変更になっています。
 本皮シートはオプション(220千円)です。デジタルメーター、サンルーフ、Hi-Fiの9スピーカーはセットオプション(214千円)です。新車で買うとなると考えてしまいますね。この車は新車ディラーの直営中古車店で買いましたが、四半期決算ごとに販売台数の割り当てがあるようで、期末になる目標達成のために、自社で買いとる(登録する)そうです。当然ながら、中古で売れる要素が必要なので、こういう豪華装備仕様を発注するそうです。(すっぴんだと新車と比較され売れない。)
 後席の写真ですが、助手席を目一杯後ろにした状態です。大抵は運転席とほぼ同じ位置に前席がきますので、実際には足元には拳一つ分は十分入る余裕があります。(筆者は身長173cm)

安全装備

 安全装備はオプションではなく標準で装備されます。レーダーと単眼カメラにより前車に追従して加速とブレーキを操作するアダプティブクルーズコントロール(ACC)は勿論、車線逸脱警報(ハンドルがブルブルと震える)、前車近接警告、衝突回避ブレーキ、レーンチェンジ警告(後続車を知らせる)が装備されます。
 ベンツのパーキングアシストのように縦列駐車や車庫入れを自動で行ってくれる機能はありません。また、速度標識を画面に表示してくれる機能もありません。私はこの機能は使いませんし、リアカメラと予測線表示があるので大丈夫ですが、同等までは装備すべきでしょう。
 ACCはベンツより若干性能が低いと思われます。第一に前車の動きを検知する反応速度が遅いです。新東名で120km/hで追い越し車線を走行中に、大型トラックに急な割り込みをされた時に、ブレーキが掛かったものの、かなり際どいブレーキングでした。ブレーキが他の輸入車のように効きが良ければもう少し制動距離も縮められたと思います。要改善です。
 第二に設定車間距離が長すぎます。私はいつも一番短く設定していますが、前に十分以上の車間があるため、大型トラックがどんどん割り込んできて、非常に危険な思いをします。仕方なく、割り込まれそうな場合は、アクセルを踏んで車間を詰めるように走っています。これじゃ何の為のACCか分かりません。
 そもそも論ですが、ブレーキをもう少し強化して、車間設定を詰めればある程度解決する問題です。ブレーキパッドをドイツ本国仕様に戻せば解決する筈です。今のブレーキでは安心して飛ばせないですね。非常に残念です。
 ETCはルームミラーに内臓されています。料金はミラー上部に表示されますが、日本車のようにカーナビには連動しませんし、音声での料金案内もありません。(ベンツは連動)
 エマジェンシーコールは標準で装備されます。これは緊急時にサービスセンターと通信できる機能で、通信回線が標準装備されています。(勿論、通信料金は無料)これはベンツC220dにはない機能ですね。

スペースユーティリティー

 購入理由となった荷室の広さと使い勝手について見て行こう。
 リアゲートの開閉は手動の他、足をリアバンパー下部付近を前後すれば、センサーが足の動きを検知して自動開閉する。(ベンツは左右に足を振る)
 リアゲートの開閉角度は5段階で調整できる。これはスーパーの立体駐車場のような天井の低い駐車場を想定している。写真は4段階目である。これは非常に便利な機能である。

 トノカバーはトランク床下に収納可能である。バッテリーも床下にある。ランフラットタイヤなのでスペアタイヤも空気入れも装備されていない。ご周知だろうが、ランフラットはパンクしても100kmくらいは走行可能だが、タイヤは再利用できない。なるべくレッカー車を呼んだ方が良い。
 リアシートは3分割タイプでそれぞれ独立に背もたれを倒すことができる。リアシートを倒せば2m程度のものは楽勝に収納できる。標準で運転席と荷室を分離する網も装備されているので、荷物を一杯に積み込んでも、急ブレーキなどで荷物が乗員室になだれ込むことはないだろう。  

総評

 高性能車という見方ではなく、ごく普通の日常使いの車として見れば、総合的に見てたいへん優秀な車だ。BMWのブランド力と3シリーズというプレミアム感は誰もが知るところである。
 標準価格は高いが、新古車を探せばそこそこ球数もあり、価格もリーズナブルだ。クラウンやフーガを考えて居られる方は、ぜひ一度、実車に乗ってみることをお薦めしたい。

Mパフォーマンス・ブレーキキット装着

 BMWには、ディラーオプションの純正ブレーキキットが存在する。車種ごとに用意されており、ブレーキの変更に伴い車両システム(ECU)の書き換えも行う。もちろん車検はOKだ。
 F31用はブレンボというイタリアの有名なブレーキメーカー製だ。前輪が4ポッド、後輪が2ポッドという本格派で、ブレーキディスクはMMCというセラミックスにアルミを含浸させたベンチレート軽量ディスクを採用する。対応するアルミホイルは純正の18インチ以上となる。

 見た目の格好良さは勿論、ブレーキフィーリングも抜群だ。真綿でギューっと締め付けるような効きで、踏んだ分だけ確実にブレーキが作用する。ベンツAMGの純正ブレーキと同じフィーリングだ。
 標準ブレーキは四輪で50kg以上あるようだが、それより遥かに軽いようで、サスペンションのバネ下荷重が減ったことで、若干しなやかになったような気がする。とにかく頼もしいブレーキで、これなら安心して飛ばせる。
 気になる汚れだが、500km程度走ってみたが、他の輸入車と比べても随分と汚れが少ない。またベーレーキの鳴きは全くない。雨上がりのディスクの錆も極めて少なく。お薦めだ。

戻る

無断転載禁止