オーディオアンプ制作の記録

 このページでは過去制作したオーディオアンプの代表作を紹介する。
 古き良き時代の懐古であるが、昨今オーディオ向きの半導体がことごとく生産中止となり、恐らくは、ここに記載されているようなアンプは二度と制作できないと思われる。しかし、こうやってディスクリートでコツコツとモノ作りをすると、色々な知識やノウハウが身に着くものである。
 現代のアンプは音の決定をする重要な回路がオペアンプで作られ、回路は半導体メーカーが決めたものをそのまま使っており、アンプメーカーの個性が無くなりつつある。

純A級 40W ステレオパワーアンプ

 1981年製の自作2号機である。1980年の雑誌「電波科学」に寄稿された窪田登司氏の「完全A級15W+15W 出力段無帰還パワーアンプの制作」記事を元に、30W出力に手直ししたもの。
 電源トランスに余裕があった為、最終的には出力40Wの純A級動作とした。2013年まで32年間現役で稼働していた。現在は休止中だが、再稼働可能だと思われる。

 オリジナルの設計より電源電圧を高くしたため、初段と二段目のJ-FETをカスケードブーストラップにした。回路図はこちら
 後に窪田氏自身が反省されているように、無帰還故に非常に安定度の悪いアンプであったため、DCサーボ回路を追加している。回路はラックス社のディオβと同じである。
  その他にも様々な工夫をしており、最終的な完成まで2年掛かった。自然空冷では難しく、ACファンを電源トランスのAC50Vで駆動している。

 全体の配置は、左がトロイダルトランス、中央がヒートシンク、右が安定化電源である。電源はトランス以降は全てLR独立設計である。全体の重量バランスが悪いのが欠点である。
 窪田式アンプは、完全なコンプリメンタリ回路を特徴とする。本機は更に、全段にFETを採用している。恐らく、この仕様は市販アンプにはないと思われる。最終段は、当時、絶賛されていたパワーアンプ、日立のHMA-9500が使用していたものと同じパワーMOS-FETの2SK134/J59をパラレルプッシュプルで使用。

 回路には高価なオーディオ用部品を惜しみなく投入、トータルで部品代が10万円オーバーであった。恐らくメーカーが同等の商品を作れば、定価は軽く50万円を超えていただろう。
 自慢ではないが、このアンプに勝てるアンプは世に中にはないと思う。どこまでも透明で柔らかい音質である。トランジスターのような硬さがなく、真空管のような立ち上がりの鈍いだるさもない。
 欠点は、微かなハムノイズ(真空管アンプと同程度)、出力段の電源を安定化すれば消えるのだが、もう一台アンプを作るくらいにお金と物量が掛かる。

 当時の設計資料が残っていましたので、ご興味のある方はどうぞ

 

AB級 50W MOS-FETアンプ

 窪田登司氏の著書「アンプ制作のノウハウ」を元に制作した自作1号機である。1979年の作品である。
 非常に作りやすく安定した、完成度の高いアンプである。その割には音質が大変良い。MOS-FET独特の透明感があり、高音の伸びも申し分ない。重低音が少し弱い。20万円台のプリメインには負けないクオリティーである。

 自作3号機の構想

 3号機は、究極のアナログアンプを目指す。全段FET+全段コンプリメンタリを踏襲しつつ、BTL方式(バランス接続)でGNDからのノイズを遮断し、かつ純A級での高出力化を達成する。(思想としてはMarkLevinsonに近い)参考回路図(未検証)
 出力段まで電源を安定化するため、医療機器グレードの超低リップルスイッチング電源を使用する。出力段は40A級のUHC-MOS-FET、アイドリング電流の安定化にトランスリニアバイアスICのLT1166を使用する。

 半導体部品とスイッチング電源は何とか手に入れたが、なかなか制作に移れない。
 老眼で細かな文字が見づらくなっているのと、昔のように細かく半田コテが操れない。それと残る部品を集める労力、ケースの加工等々、億劫になっている。
 誰か代わりに組み立ててくれる器用な人が居たら助かるのだが。

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