暗くなった庭園灯

 庭園灯を太陽光発電の電力から賄ったのは良かったのですが、最近、何となく感じる事は光量が少ないことです。
 調べて見ると、殆どのバルブがLED切れしているではありませんか。一つのバルブに5つのLEDチップが付いているのですが、うち2つが消えています。何となく茶色っぽく変色し、手で触るとボロボロ崩れます。

 LEDは点灯時に相当に熱くなりますが、長年の熱によって樹脂が劣化したと考えられます。もともと自動車のリアコンビランプ用途なので、長時間の連続点灯や屋外で湿度に晒される環境は想定されていないのでしょう。
 折角安く買って短期間で元が取れると踏んでいたのですが、逆に安物買いの銭失いになってしまいました。太陽電池と同じくメンテナンスフリーで10年使えるもうちょっとまともな商品を探さない事には…。

12V用LED電球

 しかし、LED電球ブームというか巷に溢れているのは100V用ばかりです。電球の形をした12V用のまともな家庭用商品は中々見つからない。太陽電池を扱っているエコショップにはあるのですが、余りにも高価で手が出ません。色々調べた結果、LED街路灯などを作っているアイエール電器という会社が手頃な価格で商品を出していることが分かりました。

 前回は白色LEDだったのですが、冬場は少々寒々しく、家族からも不評でした。で、今回は電球色で一番小さな2.5W品を購入することにしました。ごく一般的なE17の口金タイプで40W白熱電灯並の明るさと謳っています。元々は10Wの12Vウェッジ球が付いていましたので、随分と明るくなることが予想されます。

 電球を信用していない訳ではありませんが、切れた時の利便性と屋外でのハンダ付け作業の困難さから、今回はE17のソケットを使う事にしました。
 このソケット、青山電陶という会社が扱っていますが、陶器製の非常にしっかりした作りながら、@294円には驚きました。ネジ式で取り換えは極めて簡単で、作業は1灯10分くらいで終了します。

庭が明るくなりました

 ソケットを介してLED電球を取り付けたところです。まるで最初からそうであったかのようにピッタリと収まりました。ついでに、庭園灯の金具部分の防水パッキンもかなり劣化していましたので、シリコーンコーキング剤で防水処理を強化しました。

 夜になってLEDが点灯しました。流石に2.5Wもあれば明るさは抜群です。比較にはなりませんが、以前の1WLED電球との比較写真も見て下さい。色合いは、電球色というより、ミルキーオレンジのイメージです。ちょっと人工的で、ナトリュームランプに近い黄色ではないかと思います。

 まだ夕暮れ時ですが、庭全体に8灯の庭園灯が点って、何となく洒落た雰囲気になりました。家内もかなり満足しているようです。

 さて、2.5Wで8灯点灯させると合計20Wになります。8時間点灯で160Whにもなります。30Wの太陽電池ですと、年間平均で1日の発電量は90Wh程度です。となると、全く電力量が足りない計算になります。
 前回製作した制御盤には、バッテリーの電気が無くなると、ACアダプターからのDC12V電源に自動的に繋ぎ変える機能が付いています。従って実用上の不便さは生じませんが、折角のエコ思想がこれでは貫けません。何とかしなくては…。


100Wの太陽電池を増強

 太陽電池を増設することにします。その前に、どのくらいの太陽電池容量が必要か、見積ることにします。
 まず、1日の負荷容量を計算します。
・庭園灯 20W×12h=240Wh
・ポンプ 6W×12h=72Wh
・屋内植物育成灯 20W×2h=40Wh
合計で、352Wh/day必要です。

 次に、必要な太陽電池容量の計算ですが、太陽光発電協会によれば、地域によって格差はありますが、大阪地区で太陽電池の公称容量1kWあたり、1日に3kWh程度の電力が得られるとされています。勿論、これは天候や気温が考慮された年間「平均値」(真南向かつ傾斜角30度設置)です。小煩い事を言えば、太陽電池の設置角度や向き、インバーターの効率にも左右されますが、我が家の場合、ほぼ南向き、屋根勾配も4.5吋(=23度)なので、余り気にする必要もないと思います。なんだいい加減だな!と怒られる方も居られると思いますが、所詮はお天道さま任せ、自然任せなので、計算通りというのは望めません。
 352Whを得る為には、公称値容量で117W以上の太陽電池が必要な計算になります。ここからチャージコントローラーでの損失や制御盤の消費電力を考えて10%の損失を見込みと、130W必要になります。我が家には既に30Wの太陽電池がありますので、100W分を増強することにします。*1
 しかし、我が家の太陽光発電システムでは、チャージコントローラーの仕様が10Aまでに制限されており、156Wの太陽電池は容量オーバーで設置する事ができません。仕方なく、不足分はACアダプターから給電して電気が途切れないようにします。
 *1 太陽電池の場合、季節によって太陽の角度と天候・気温が変りますので、発電量も変化します。大阪地区の場合、1年を通じて最大発電量は5月で年平均の120%、最小発電量は12月で年平均の80%というデータがあります。完全な独立電源システムでは、1日の発電量は最低月をベースに計算する必要があります。そうすると、我が家の場合は電力量で78Wh/day足りず、太陽電池容量は26W分不足する計算になります。

 最近、中国製の太陽電池モジュールがインターネットで売られています。日本製に較べて格安で、性能的にも実際に1年間使ってみて何も問題無い事を実感しました。今回は、堀江商事(株)が扱っている単結晶タイプの50W太陽電池を2枚購入しました。1Wあたりの単価は270円と、私が調べた限りでは一番安いです。

 購入してみての感想ですが、前回、丸美から購入した30W品はホビー用でしたが、今回は産業用途のまともな商品でした。耐電圧が1000Vの欧州電気規格をクリアーしており、セルの間隔やアルミフレームとの縁面距離も広く取っています。その為50Wにしてはモジュールは若干大きめです。

 アルミ枠は断面が袋構造になった剛性の高いもので、端子ボックスにはバイパスダイオードが入っており、直列使用が前提で設計されています。また、ケーブルは2重絶縁線を使用し、コネクターは太陽電池業界では標準となっている防水型の最新型MC4コネクターを装備するなど、完全なプロフェショナル仕様です。このような製品が一般に出回っているとは、正直驚きました。

独立電源用の太陽電池モジュール

 既にお気づきの方も居られると思いますが、住宅用や産業用の系統連携用モジュールと違って、一般に販売されている独立電源用のモジュールは、殆どが12V系統用または24V系統用に作られています。モジュール1枚の出力が100W近辺で12V用か24V用に分けられています。
 12V系統用は、最適動作点(出力が最大限とれる電圧値)が16-18V*4の範囲になるように設計されおり、どこのメーカーのモジュールでも並列に接続して使うことができます。(乾電池と同じ)
 *4 12Vより高い理由は、鉛蓄電池の充電電圧として最大14.4V必要なことと、温度上昇時のモジュール電圧の低下約10-20%、チャージコントローラー内部の半導体ロス電圧1V程度を見越した値になっているためです。


蓄電池の増量

 我が家の場合、最低限必要な蓄電池容量は、庭園灯の分=240Whです。
 更に、雨や曇りの日があると1日に必要な電力をその日の太陽光発電量だけでは賄い切れませんので、晴れた日に電気をストックしておく必要があります。雨の日、消費電力は、庭園灯とポンプだけになり、1日に312Wh必要です。仮にこの1日分だけ貯めるとして、蓄電池容量は前日の夜の分と当日の分の合計で、240+312Wh=552Whが必要です。*2
 *2 一見、1日の発電量と釣り合いませんが、発電量はあくまで、雨や曇り、晴れの日を考慮した「平均値」です。即ち、実際には晴れの日は、この平均値よりずっと多く発電しているということです。ちなみに、雪国では冬場は、この平均値が極端に小さくなります。

年間を通じてストックできないか。

 実際の1日の発電量は、前述の「平均値」を上下変動します。即ち、余った電気を天候の悪い日の為に蓄えて置く発想です。
 では年間を通じて夏場に冬場の不足分を貯めて置けるのでしょうか。我が家の場合ですと、20%不足分は1日あたり78Whになります。これを3ヶ月分(6ヶ月分の平均値)蓄えると14kWh、電気自動車並の大きな蓄電池が必要となります。これではちょっと現実性はないようです。

 蓄電池の容量計算には、保守率と放電深度の考え方が必要です。蓄電池は完全に放電してしまうと充電できなくなります。また浅い充放電なら寿命サイクルも長くなります。放電をどこまでさせるかが放電深度であり、チャージコントローラーが制御しています。通常は50%程度と考えて下さい。*3
 蓄電池は経年劣化で容量が減りますからこれを保守率(寿命末期における容量減少率)として通常80%程度の容量しか想定しません。即ち、蓄電池の公称容量×放電深度×保守率が実際に使える蓄電容量です。
 我が家の場合は、552Whに対して蓄電池容量は、552/0.8/0.5=1380Whが必要という計算になります。
 115Ahの蓄電池が必要とされますが、一般に販売されている蓄電池で、かつコストパフォーマンスを考慮し、今回は電動ボートやキャンピングカーで定評の韓国G&Yuのマリン用105Ahデープサイクルバッテリーを購入しました。(@12,800円と格安)
 *3 後日分かった事ですが、市販のチャージコントローラーは、保守率と電池寿命を考慮し放電深度を20-25%に置いているようです。(終止電圧を11.5V付近に設定)従い、初期設定のまま使用する場合、この計算例より2倍の蓄電池容量が必要となります。


太陽電池の設置

 前回、30W太陽電池の設置場所に関してはかなり悩みました。今回は太陽電池モジュール1枚が835×540mmもあり、前回の手法は通用しません。しかもモジュールは2枚あります。これでは、屋根に載せる以外の方法は無さそうです。
 住宅用太陽電池の設置では、瓦の上に架台という金属製の取付台を設置します。この架台は瓦を挟んで瓦の下の垂木という屋根の骨格となる縦柱に固定します。屋根は瓦・桟木・防水シート・野地板・垂木という構成になっています。通常の住宅用太陽電池の施工は専門の手慣れた職人さんが行います。専門の道具も必要ですし、足場を組んで屋根に登る必要もあります。素人工事ではこの手法は使えません。
 原点に立ち変えって考えて見ることにします。
  Q:架台はなぜ必要なのでしょうか。
  A:風によって太陽電池が吹き飛ばされないようにしっかり固定する為です。
 では、直接垂木に固定する以外の方法は無いのでしょうか。今回の太陽電池モジュールはたったの2枚、屋根面積から言えば微々たるものです。重量も僅かです。*3 
 心配なのは風圧ですが、風が太陽電池下面から入ってきて風圧×面積で巻き上げる力が働きますので、下面の隙間を小さくすることが重要です。しかし、隙間を無くしてしまうと、太陽電池モジュールの冷却が妨げられ発電効率が低下します。従って2つの対策を行います。
(1) 側面の面積(風圧抵抗)と風の入る隙間を減らす。太陽電池モジュール取付ポールを屋根面に密着させる。
(2) 下面および上面の空間をポール一本分確保する。この方向からの風の巻き込みは考え難くく、チムニー効果で熱は下から上に上昇するため冷却効果も期待できる。
 なお、一般に空中より地表面(屋根表面)に行くほど風速は低下します。物体表面は粘性抵抗により風速ゼロ、風速は距離の2乗に比例します。従って、できるだけ瓦面にピッタリ沿って設置する事がポイントです。
 まさに流体力学・材料力学・熱力学の知識のフル活用ですね。
 *3 我が家の屋根の勾配は4.5吋、即ち23度と比較的緩やかです。太陽電池の重量は2枚分+連結金具で15kg程になります。屋根に置いた場合、勾配が緩やかなので、殆どの荷重が瓦面に垂直に掛かります。ずり落ちようとする力は瓦との摩擦を無視すれば、15×sin23=5.9kgfと計算されます。

 ならば、屋根以外の住宅構造物に固定すれば良いのではないかと考え、ベランダ手摺りから頑丈な支柱を立てて、支柱で太陽電池を支える構造を取ることにしました。
 また屋根に登らず、太陽電池を直接瓦面に載せるために、リンク機構を上手く考えて、ベランダから持ち上げるような形で、正確に目的位置に設置できる構造を考えました。名付けて「山本式スライド架台」です。
 目標としては右の写真のように太陽電池を設置します。新開発の「山本式スライド架台」なら屋根に登る必要は全くありません。手順通りにやれば、安全かつ確実です。モジュールを屋根に上げる時間は約10分、これは、まさにマジックです。

構成図

 山本式スライド架台は固定架台と可動架台より構成されます。固定架台(部材A~D)はベランダ手摺りに固定され、2本の縦ポール(部材B)は鉛直方向かつ平行に設置されています。可動架台(部材E〜K)の一端には太陽電池モジュール(部材L)が取付られ、他端には回転軸用の横ポール(部材F)が付いています。この可動架台は縦ポール(部材B)に沿って上下方向にスライドし、かつ回転軸(部材F)を中心に回転する構造になっています。

動作説明

 セットアップ前は、可動架台は先端が雨どいに接触した状態で、ほぼ鉛直に立っています。また外側(庭方向)に倒れないように、横ポール(部材D)で保護されています。
 可動架台の横ポール(部材F)を上方向に持ち上げることでセットアップ作業が進行します。可動架台はセットアップ完了直前まで、常に雨どいに持たれ掛かるような状態で接しながら移動します。また、雨どいとの接点を中心にシーソーのように回転移動をします。移動中は、可動架台の荷重は横ポール(部材F)とこの支点により支えられます。可動架台は最初はほぼ鉛直に上昇しますが、雨どいとの支点がある為に、この支点を回転軸として自重により、徐々に水平方向(屋根方向)に倒れて行きます。これに伴い、可動架台の荷重は横ポール(部材F)から支点側に移動して行きます。そして、可動架台が瓦面に接触し始めると同時に雨どいから離接します。最後は、可動架台全体が屋根瓦面に沿うような形で屋根に軟着陸します。


山本式スライド架台 パーツリスト

 部品名は業界一般名称です。上記原理説明との対応は、ベランダ取付金具=部材A、アンテナマストΦ32mm(M-180D3)=部材B(H,Iも同じ)、アンテナマストΦ24mm(M-120D)=部材D(Fも同じ)、クロスマウント=部材C(E,Gも同じ)になります。HI金具は形状が異なりますが部材J,Kと同じ役割をします。マストカップリングは元の設計にはありませんが、部材Aと部材Bを結合するために使用します。
 当初、CADソフトを使って専用のパーツを設計しましたが、試作業者に見積りを取ったところ、一番安い業者でも約6万円の製作費と3週間の納期が掛かることが判明しました。今回、太陽電池モジュールが2枚で送料込み約3万円でしたので、これでは本末転倒です。オリジナルパーツは諦めて、アンテナ設置用の汎用金具を流用して組み立てることにしました。部材選択は単純に安いだけでなく10年は使いたいので、メッキ処理のしっかりした錆が発生し難い部材を優先しました。

パーツの説明

 特に説明の必要な部材が2つあります。
 写真の左側が「クロスマウント」と呼ばれる2本のアンテナマスト(鉄製のポール)を互いに直角方向に結合する為に使用する金具です。この金具は、一方はΦ24mm以上、もう一方はΦ32mm以上のマスト径がないと使用できません。元々の設計では軽量化の為Φ24mmマストだけで構成したかったのですが、今回は仕方なくマスト径を2種類混在させています。ただしΦ32mmマストを縦ポールに使用したことで、少々のことでは曲がらないくらい頑丈な架台となりました。(風速10mくらいでは微動だにしない)

 ダイキャスト製です。かなりしっかりした作りなので、今回はボルト穴を空けて、太陽電池モジュールとΦ32mmマストの結合に使用しています。

固定架台の製作

1.ベランダ取付金具の設置
 まず、ベランダ取付金具をΦ32mmポール部分の中心間隔が1000mmになるようにベランダ手摺りに仮止めします。
 この時、ベランダ取付金具のΦ32mmポールの先端にマストカップリングを取付けておきます。Φ32mm縦ポールが後で嵌められるように挿入側のボルトを少し緩めておきます。
2.固定ポールの組立(写真にはありません)
 最上部の固定ポールを組み立てます。Φ32mm縦ポールとΦ24mm横ポールをクロスマウントを使って組立てます。
 この時Φ32mm縦ポールの中心間隔は1000mmにし、クロスマウントは支柱先端を50mm残した位置に固定します。
 更に、本来、可動架台の一部となるべきΦ24mm横ポールを、先ほど固定したΦ24mm横ポールのすぐ下辺りでクロスマウントにて一旦仮組立を行います。
 この時にΦ32mm縦ポールの間隔が固定されるようにクロスマウントのΦ24mm横ポール側ボルトを固定します。
 Φ32mm縦ポールの固定ボルトは緩めておます。そのままΦ24mm横ポールを下側にスライドさせて行き、下からΦ32mm縦ポールの下から200mmの位置で仮止めしておきます。

3.固定ポールとベランダ取付金具の結合
 仮組された状態のまま、先に準備しておいたマストカップリングに差し込みます。重いのでベランダ下に人が居ない事を確認してから、二人で作業するようにします。
 カップリングにきちんとΦ32mm縦ポールを差し込んだら、カップリングのボルトをしっかり締めつけてます。
4.固定ボルトの本締め
 ベランダ取付金具の本締めを行いしっかりと固定します。
 念のためΦ32mm縦ポールが鉛直に設置されている事を水準器等で確認してください。これで固定架台の出来上がりです。

画像をクリックすると部材説明と組立状況が見れます。

可動架台の製作

 次は、屋根に設置する可動架台の製作方法を説明します。完成イメージから見て行きましょう。太陽電池モジュールを2枚、下向きかつ長手方向横向きに上下に並べます。モジュールのアルミ枠とΦ32mmマストをHI金具で4個所ずつ結合します。マスト下部にはΦ24mm横ポール(回転軸)と結合するためのクロスマウントを取付けます。

1.HI金具と太陽電池モジュールの結合
 現物合わせでOKですので、HI金具を所定位置(図のように端面を揃える)に置いて、モジュールのアルミ枠に穴開け基準をポンチします。
 モジュールアルミ枠の穴開けは普通の鉄工用ドリルでできますが、アルミ枠が袋構造になっていますので、結構深い穴空けになります。
 ボルトはステンレス製のM6×25mmを使用します。穴径はΦ6.5mmにします。ナット側をモジュールアルミ枠の内側にしますが、平ワッシャーとスプリングワッシャーを必ず付けて下さい。スパナでしっかり締めつけます。

2.HI金具とポールの結合
 Φ32mmポールとの結合は左写真のようになります。HIカナグは緩み止めの為、ダブルナット留めとなっています。
 ポールは太陽電池モジュール先端部から50mm突き出る位置にて固定してください。太陽電池のモジュール間隔は、六角ボルトの頭が当たるようにでできるだけ詰めてください。ナットはM6です。下側のナットをしっかり締めてください。
 上側のナットは手で仮留めする程度で十分です。後で外して袋ナットに取り換えます。

3.不要部分の切断
 8ヶ所のHIカナグとポールをしっかり結合し終えたら、HIカナグのボルトの不要部分をカットします。上側ダブルナットの頭を境にして、金属ノコギリで切断します。

 ボルトはステンレス製なので、普通の鋸刃では切れません。鋸刃はハイス(高速度鋼)製のステンレスがカットできる物を選んでください。
 刃だけで1,000円くらいするので驚かれる方が多いと思いますが、鋸刃にお金を掛けた分だけ作業は楽になります。ハイスは脆いので無理な力を掛けると刃が折れます。
 ゆっくりと刃をこじないように鋸を引くことがポイントです。私は16本切るのに2時間くらい掛かりました。
 ダイヤモンド製の糸鋸もありますが、切るというより削るというイメージで、私はこういう用途に向かないと思います。

 切ったボルトの先は、先端のナットだけ外してステンレス製のM6袋ナットに取り換えます。今度はしっかり締めつけてください。

4.太陽電池からの配線
 もったいないですが、太陽電池モジュールに付属しているコネクターは取り去り、別途用意した配線ケーブルと接続します。
 配線ケーブルは余裕をみてAWG18程度の太いものを使って下さい。電器店で買うと高いですが、自動車用の配線ケーブルの方が意外と安く入手できます。
 ケーブルの芯線同士の結合はハンダ付けします。屋根に上がってしまいますのでメンテナンスフリーにしたいので100%確実な方法を採用します。長期の使用に耐えるようにブチルテープでしっかり絶縁します。
 ハンダは太陽電池の内部結線で使われているように信頼性が高い電気的接続方法です。
 ブチルは長期耐候性が抜群の材料で、自己溶融性があるため、ブチルテープは巻いた後、溶けて一体化して防水・防湿性を発揮します。最近はクリスマスイルミネーションで使われる方も多く、ホームセンター等で容易に入手できます。

 完成した可動架台の写真です。100Wの容量になると流石に太陽電池モジュールもでかいです。総重量で15kg程度になります。この後、ベランダに移動し建設作業に入ります。(下側のクロスマウントの向きに注意して下さい。)
 朝速くから作業を始めて、順調に進んで、ここまでで夕暮れ時になります。外での作業は困難なので、この後の作業は明日以降に持ち越します。

太陽電池の設置作業

 以下の作業は必ず二人以上で進めます。
1.可動架台を固定架台にセットアップ
 作業の安全を図る為、先ずは安全ロープを取り付けます。ロープを固定架台の最上部にあるΦ24mm横ポールに掛け、滑車として使用します。ロープの一端を下側のΦ24mm横ポール(可動側)にしっかり固定します。他方はベランダ手摺りにしっかり固定します。
 可動架台のクロスマウントにはΦ24mm横ポールを固定するU字型の金具がありますが、これを取り外しておきます。
 可動架台を二人で持ち上げ、下側のΦ24mm横ポール(可動側)に、先ほど外したU字型の金具で仮止めします。この作業が最大の難関で、できれば二人で持ち上げてクロスマウントの位置合わせし、もう一人がU字金具を通して仮止め作業するのが良いと思います。

2.可動架台の屋根への移動
 二人掛かりでゆっくりと下側のΦ24mm横ポールを持ち上げます。ここで仮止めが余りきついと動きませんので、仮止めボルトの締め具合を調整しながら作業を進めます。
 横ポールを持ち上げるに従って、可動架台は徐々に屋根側に倒れて行きます。
 最初は可動架台の重量感がかなりありますが、上昇が進むに連れて、この重量感が薄れてゆきます。
 屋根面に接地する頃には、殆ど自重で可動架台がゆっくり倒れて行き、あっけない位に自然と定位置で停止します。

3.設置状況の確認
 可動架台が定位置に停止したところで、可動架台のΦ32mmポールの傾き角を測定します。この角度が屋根傾斜角にほぼ合っていれば設置完了です。
 我が家の場合、屋根傾斜角23°に対してポール傾斜角は25°でした。定位置に達したところで、念のためデジカメに三脚を付けてセルフタイマーで屋根上を写真撮影し、可動架台に浮きがないか確認してみてください。

4.固定ボルトの本締め
 確認が終ったら、仮止めボルトを本締めします。設置手順と逆方向に屋根からずり落ちる事は考え難いですが、しっかりとスパナで締め付けます。締め終ったら、念のため、他のボルトにも緩みが無いか確認をしておきましょう。

ポール陰の影響について

 冬至に近い日に観測した太陽電池モジュール設置用ポール(支柱)の陰について、右図のような状態で、全く影響がないことを確認しています。

接続箱の製作

 さて、今までは30Wの太陽電池単独で使用していましたので問題にはなりませんでしたが、今度は30W、50W、50Wの3つの太陽電池を並列に接続して使用します。
 太陽電池の最大出力点電圧は3枚とも同じですが、3枚とも同じ日射条件とは限りません。30Wと50Wでは設置条件が違いますし、50W同士でも雲や飛行機の陰の影響は避けられません。
 ここで問題になるのは、電圧が微妙に違って太陽電池に逆方向の電流が流れる可能性があることです。太陽電池が逆に負荷となって電力消費して効率が低下する懸念があります。これを防止する為に太陽電池モジュール1枚毎に逆流防止ダイオードを直列に挿入します。

 逆流防止ダイオードと端子台をセットにしたボックスを接続箱と言います。商用の太陽光発電システムではメジャーな装置で、完成品として販売しているものもありますが、産業用の大きなものではパーツを集めてきて、電気工事士さんが現場で設計図を見ながら組み立てる場合もあります。
 今回、12V用は市販品が無いので、オリジナルで製作しました。逆流防止ダイオードには順方向の電圧低下が少ないショットキーバリアダイオードを使用します。ここでは入手の楽なSBR1045(45V10A定格)というダイオードを使っています。LEDは動作確認用に付けているもので必須ではありません。太陽電池の動作電圧が変化しますので、定電流ダイオードを使ってLEDを駆動します。

 端子台以外に、コネクターが付いていますが、作業性を高めるためで必須ではありません。独立型太陽電池のような低電圧かつ大電流用途には自動車用部品が価格も安く適しています。
 接続箱は市販の防水プラボックスを流用し、縦ポールにマジックテープ付きベルトで固定しています。


制御回路の改造

 前回製作した統合制御基板では、発電電力計の最大表示は100W程度までと推定されます。理由は制御回路の電源電圧が±12Vであり、1W=0.1Vで電力値を表示させているので、出力用オペアンプの性能から最大で10V程度の電圧しか出力できないからです。また、今回、最大出力時の電流は7.65Aですから、電流計測用の0.1Ωシャント抵抗で5Wを越える電力消費があり、この部分の改善も必要です。更に、プリント基板自体のパターンも35μm銅箔で幅2mmですから、バイパス回路などを設けて強化する必要があります。(流せない事はないが、熱損失となるため)

電流計の交換

 前々回製作した制御BOXのアナログ電流計は最大値2.2Aですので、今回は使用できません。同じサイズの商品で10A品に交換します。

電源電圧の変更

 電源に使用しているTDK製DC/DCコンバーターは±15Vにも対応しています。ジャンパ線(青色)を1本追加するだけで対応できます。なお、コンデンサーやICなどの耐圧も大丈夫なようです。
 なお入力電流の増加に対応するために、電力計部のパターンにジャンパ線(赤、黒)を追加しています。

シャント抵抗器の変更

 シャント抵抗器は極力小さくしたいのですが、0.01Ωでは実装が難しく配線抵抗なども気になります。一般に入手可能な高電力高精度抵抗器から0.05Ω(1%,3W)を選定しました。電流電圧変換レートは従来の半分になりますが、消費電力は半分に抑えることができます。最大出力時は2.93W消費することになりますが、太陽電池の場合、一般的にこの出力状態が数分も続く事は先ず無いといえます。条件が良くて90%程度の出力です。
 更に前回は入力部にショットキーダイオードを入れて逆流防止していましたが、今回は接続箱に同じ機能がありますので、無駄な電圧ドロップを回避する意味でジャンパ線で飛ばします。

2号機の写真です。電解コンデンサーは可能な限り積層セラミックに置き換えています。今回のPWM疑似正弦波モーター駆動は基本周波数58.6Hz、変調周波数18.56kHzでした。
 お役御免となりました1号機をご希望の方に実費でお譲り致します。

電圧増幅率の変更

 従来は電力計測用IC(AD633)の入出力制約条件から、1W=0.01Vとして出力させ、オペアンプで101倍に増幅し1W=1Vとして出力していました。今回、シャント抵抗の変更により1W=0.005Vになりましたので、増幅率を約2倍増の197倍にして対応します。(R59を10kΩから5.1kΩに変更)これにより出力は従来通り1W=1Vになっています。なお、オペアンプμPC813は入手が楽でピンコンパチ(741型)のCA3140Eを使用しています。


システム完成

 昨年の夏休みから取組んできたミニ太陽光発電所も一応完成しました。噴水ポンプの駆動、植物育成灯の点灯、庭園灯の点灯と欲張ったために、130Wという独立電源システムとしてはちょっとした規模になってしまいましたが、エコを満喫できて満足度はかなり高いです。
 結果的には全部で15万円くらいは掛かったかと思いますが、ラジオ少年世代の親父のための、このような癒し系のキットがあっても良いのではないかと感じます。皆さんもぜひチャレンジしてみて下さい。


庭園灯更新(2020.3.6)

 2010年7月に今の庭園灯が完成し、早くも10年目を迎えようしている。2週間前から庭園灯が不調で、点いたり消えたり。灯具はこの家を建てた16年前から使っている。アルミダイキャスト製なので表向きは錆など一切ないが、ゴムのパッキンはとっくの昔に朽ちて、コーキングをしてあったがそれも劣化し、内部に水が入ってLED電球に侵入している。電球の1つは完全に輝度が落ちている。
 今回は、不調の原因究明と設備の更新を行なった。

 症状で特徴的なのは、雨が降った日は点灯し、1日晴れの日は点灯しないことだ。また、一部が点灯しないのではなく、全部が点灯しないことだ。
 色々調査した挙句、最後に発見したのがコネクターの不良である。写真のコネクターは自動車用として販売されているものだが、屋外用には考えられていない。長年の使用で電極の真鍮が完全に錆びて、接触不良を起こしていた。コネクターを廃して、エレクトロタップで直接接続することで回復した。

 このエレクトロタップは大変重宝しています。電線の皮を向かずに電線同士を接続できます。締め付けが硬いので、プライヤーなどを使う必要はありますが、ロック機構があり、一度閉まると外れません。耐候性も高く、屋外での使用にも耐えます。防水性はありませんので、12Vなど低い電圧専用です。
 庭園灯の配線は、2SQの自動車用塩ビケーブルを使用しています。色褪せはしていますが、10年経っても十分に使用できます。

 従来、庭園灯へはバッテリーから直接取っていましたので、バッテリーの充電状態により庭園灯の明るさが変化していました。今回、LED電球も新しい物に取り替えますが、事前の確認では11V以下では点灯しないようなので、この際、供給電力の安定化を図りました。
 使用たDC/DCコンバーターはAKON製(安い!)の12V/12V(60W)の昇降圧タイプです。出力は13.2Vに設定しました。庭園灯のケーブルは総延長が30mほどあり、2SQの太い目の電線を使っても、終端で0.8Vの電圧降下があります。
 変換効率は72%程度と低いので、使いたく無かったのですが、バッテリー電圧は11V程度まで下がることもあり、終端で10.2Vでは今回のLEDは点灯できません。

 以前使っていた電球は、左側のE17口金の日本製です。同じものを入手しようとしたましたが、会社が倒産しており市場在庫もありません。どうやらE17タイプの12V電球はこの会社しか作って居なかったようで、市場にあるのは全部E26タイプです。
 最終的には、アマゾンで「太陽光発電用」を謳い文句にする右側の電球にしました。中国製で非常に安いです。E26タイプであれば他にもありますので、今回はこれを試してみます。古い電球は、黒くなったもの以外にも、中に水滴があったりしたので、この際全部取り替えることにしました。
 口金サイズが違うので、ソケットも全部E26用に取り替えました。ソケットは以前と同じ青山電陶製です。また同時に灯具のシーリング部分も、古いコーキングを綺麗に剥がして、新しくコーキングしておきました。これで後10年は大丈夫な筈です。

 以前より随分と庭が明るくなりました。以前は橙色だったのですが、家内はこちらの電球色がお気に入りのようです。(写真では明るすぎて白色に見えますが)
 消費電力は以前に比べ大幅にアップし41Wになりました。ベースの制御盤で8W消費し、電球1個が3W、8個で24Wとなります。DC/DCの変換効率が72%なのでつじつまはあって居ます。まあ、家内が気にいってくれたので良しとしましょう。

DC/DCコンバーターを換装

 以前、車のLEDフラッシャー化を検討した際に使った高効率DC/DCコンバーターのストックがあったので、それに取り替えた。これまで使用してたAKON製はオーソドックスなトランスタイプであったが、今回は最新鋭のスイッチングタイプである。4つのFETでスイッチングロスを減らしており、最大効率は95%高い。

 実際に使ってみて消費電力は35Wまで低下した。変換効率は89%である。これまで使用していたものと比較して、同一容量ながら随分と小型化されているので、制御盤の中はご覧の通りスカスカである。


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